ブロックチェーンの実用化
ブロックチェーンは、今後世界のインフラの形を根底から覆してしまうほどの威力を持っているといわれています。
しかし、多くの金融機関や政府、巨大IT企業が研究開発を進めてはいるものの、産業での実用化のめどが立っておらず、人工知能(AI)やバーチャルリアリティ(VR)、ドローンのようなテクノロジーに大きく遅れをとっています。
その理由としては、ブロックチェーン上のアプリケーション開発に取り組む企業やプロジェクト数の増加に比べて、そのプロトコルやアーキテクチャ自体に大きな変化がないからです。
また、ブロックチェーンだけで完結するアプリケーションが限定的で、ブロックチェーンを有効活用できるユースケースやシステム構成が洗練されていない点も問題と言われています。
さらに、ほぼ全てのブロックチェーンが独立したネットワークで相互運用性もないため、新たなブロックチェーンが生まれるたびにネットワーク効果を失っていく点も考えなければならないでしょう。
年々データ量が膨れ上がり、より高頻度なトランザクション処理能力が求められるウェブにおいて、スケ―ラビリティに欠けるブロックチェーンの適合性を疑問視する向きも見過ごせません。
なお世界各国の動きを見ると、たとえばエストニアでは、政府が国民の医療データの記録管理を目的に試験を始めました。
※ 2015年12月より住民サービスをブロックチェーンで運用・管理するシステムを導入。
また、スウェーデンでは土地登記の分野での応用に向けてテストが進められ、オーストラリアでは世界標準のインフラブロックチェーンの開発が進んでいます。
※ 国際標準化機構(ISO)は2016年10月に「ブロックチェーンと電子分散台帳技術に係る専門委員会」を設立し、システム、アプリケーション、ユーザー間の互換性やデータ交換に関する国際標準化活動を始めるとみられています。
(参考文献:この一冊でまるごとわかるブロックチェーン&ビットコイン/日経BPムック,2016)